邪な囁き
主人公の正田正義は33才。航空会社に勤務するジャンボ・ジェット機の副操縦士である。彼は極めて優秀なパイロットであり、会社からも将来を嘱望されている。
そう。彼は真面目で、親切で、公平で、真っ当な人間だ。誰もが そう思っている。けれど・・・本当はそうではないのだ。彼の中には幼い頃から「邪悪な生き物」が棲みついていて、そいつは絶えず彼に邪悪なことを囁き続けるのだ。
「こんなことをしたら、大勢の人を嘆き悲しませることができるぞ」
「こんなふうにすれば、誰にも知られずにこんなに悪いことができるぞ」
その囁きが、とてつもなく邪悪なものだということは彼にもわかっている。けっしてやるべきではないのだということも、わかっている。
しかし、同時にその囁きは、とてつもなく魅力的で、とてつもなく面白そうで、彼はそれに逆らうことができない。
彼はやる。「邪悪な生き物」が囁きかけるままに、邪悪な行為を続けていく。次から次へと・・・繰り返し、繰り返し・・・決定的な破滅に向かって・・・。
そうだ。行く先に破滅が待っていることは、主人公にもわかっている。けれど、それにもかかわらず、彼はそれをやめることができないのだ。
「飼育する男」のあとがきに書いた「邪悪な生き物」のことを、掘り下げていったのが今回の小説で、僕の作品としては久しぶりにカタルシスを覚えるようなラストシーンになっています。
読者のみなさま、ぜひ読んで、感想をお聞かせください。

