67:続・我が家の怪奇現象
最近の「お菊」は異常に鳴く。とにかく鳴く。
ここに引っ越して来るまでは、あんなに無口だったのに、呆れるぐらいによく鳴く。
いちばん鳴くのは、早朝である。
僕が午前5時か6時に餌をやった後、「にゃーお、にゃーお」としつこく鳴いている。それも僕たちのいる二階の寝室ではなく、一階のリビングルームで鳴くのである(餌は二階の寝室で食べているので、それから一階に下りるのだろう。僕たちは寝ているので定かではない)。
「にゃーお、にゃーお、にゃーーーーおーーーー!!」
その声がうるさくて、妻と僕はたいてい目を覚ましてしまう。
やがて「にゃーお、にゃーお」の声が階段を上って来る。だが、寝室のドアのところで声はぷつりと途絶える。そして、僕たちが10時頃に目を覚ました時には、寝室のドアの前にあの小さな黒猫のヌイグルミが転がっているのだ。
次に鳴くのは夜、僕たちの入浴時。
恥ずかしいから書きたくなかったのだが、僕たち夫婦はこの20年、いつも一緒に入浴している(ケチなので、そのほうが給湯代金が安く済むという考えからです。ほかに理由はありません。僕の両親も妻の両親もそうしていました。妻の姉もそうしているということです)。
するとまたしても、一階のリビングルームで「にゃーお、にゃーお」が始まるのだ。
朝と同じように「お菊」のやつは鳴きながら階段を上って来る。その声が浴室にいてもわかる。そして、「お菊」は、浴室の前でぴたりと鳴き止む。
僕が風呂から出ると(いつも僕が先に出ます)、そこに「お菊」の姿はない。その代わり、小さな黒猫のヌイグルミが転がっている。
これでヌイグルミが一階から二階へと移動する理由は、ほぼ明らかになった。犯人は「お菊」しかいないのだ。
だが、「お菊」のやつがどうやって、ヌイグルミを口にくわえながら鳴くのかは、ずっと謎のままだった。
その謎が解決したのは先週のこと。
その晩、僕は角川書店の人たちと深夜まで飲み歩いていた。それで妻はひとりでベッドに入り、本を読んでいたらしい。
ふだんの「お菊」は深夜には鳴かないのだが、なぜかその晩は0時をまわった頃になって、一階で「にゃーお、にゃーお、にゃーーーーおーーーー!!」が始まった。
それは本当に凄まじい声で、妻は思わずベッドを飛び出し、廊下から階段を覗いた(我が家では廊下の手すりの向こうが階段になっています)。
すると、「お菊」のやつが黒猫のヌイグルミを口にくわえたまま、「にゃーお、にゃーお」と鳴きながら、階段をゆっくりと上って来たというのだ。
その姿は何かに憑かれたかのようで、とてつもなく不気味だったという。
「化け猫かと思ったわ」
べろべろに酔っ払って帰宅した僕に、妻はそう報告してくれた。
だが、これですべては解決した。
黒猫のヌイグルミは「お菊」のやつが口でくわえ、なおかつ鳴きながら二階に運んでいたのである(猫は口に何かをくわえたまま鳴くことができるようです)。
うーん。「お菊」のこの行為には、いったいどんな理由があるんだろう?
僕たち夫婦は今度はその謎に挑もうとしてしいるのである。
またしてもバカバカしくて、すみませんでした。にゃーお。






