52:箱が好き!!
僕は一日のほとんどの時間を家に引きこもって暮らしている。だから、妻も僕に合わせて、そんな引きこもり暮らしを続けている。
食料品はほぼすべて生活協同組合の宅配だし、買い物もほとんどがインターネットでの宅配である。ワインもウィスキーも書籍もCDも、好物の生牡蠣までも、すべてそうやって購入している。
そんなわけで・・・我が家には、毎日のように宅配便の荷物が届く。そういう荷物のほとんどは段ボール箱に入っている。
「お菊」のやつはそういう箱が・・・特に、自宅に届いたばかりの新しい箱が大好きである。
ピンポーン。
宅配便のお兄さんがドアチャイムを鳴らす。
すると「お菊」は、家の中のどこにいても玄関まで走って行く。そして、宅配便のお兄さんが荷物を置いて帰るとすぐに、シッポを垂直に立てながら、届けられたばかりの荷物の周りをぐるぐると歩く。
「早く開けろ!!」
そういう目で「お菊」は僕を見る。
我が家では段ボール箱を開けるのは僕の担当だが、僕は意地悪をして、なかなか開けてやらない。「お菊」に意地悪をするのは、僕のライフワークである。
すると「お菊」はいらいらして、「にゃー、にゃー」と鳴いてせがむ。箱を開けてもらいたくて、たまらないのである。
「開けてほしいなら、もっと鳴くんだな」
勝ち誇ったように僕は言う。そして、いらいらを募らせている「お菊」の様子を眺めて楽しむ。
「にゃー、にゃー、にゃー」
「お菊」のやつは、さらにいらいらして鳴く。
「さっきまでの箱に入ってればいいだろう?」
僕はさらに意地悪を続ける。実際、室内には、ついさっきまで「お菊」が入っていた段ボール箱が置いてある。
「にやー、にゃー、にゃー、にゃー」
「お菊」はガリガリと箱に爪を立てて鳴き続ける。
「そんなに開けたいなら、自分で開ければいいだろう?」
僕はなおも意地悪を続ける。
「にゃー、にゃー、にゃー、にゃー、にゃー」
猫を相手にいつまでも、そんなバカバカしいことを続けていても意味がないので、やがて僕は箱の蓋を開けて中身を取り出す。
すると「お菊」は「待ってました!!」とばかりに箱に飛び込む。そして、しばらくのあいだ、箱の内側に身体を擦り付けたり、箱の縁を噛んだりしている。それから、箱の中で自分の身体をなめ、そのまま眠ってしまう。
どうして新しい箱が好きなんだろう? すぐそこに、さっきまで入っていた箱があるのに・・・。
だが、深くは考えない。考える気にもならない。
僕は「お菊」が新しい箱の中で眠っているうちに、それまであった箱を捨てる。そうしないと、狭い我が家は段ボール箱で埋まってしまうからだ。
室内に置く空き箱は一個だけ。それが我が家のルールである。
はい。そんなわけで、「お菊」は今も届いたばかりの「PEACH JOHN」と印刷された白い段ボール箱に入っております。これから僕は、それまで「お菊」が入っていた「FANCL」と印刷された箱を捨てに行きます。この箱、もう毛だらけだよ。
「お菊」と僕と箱にまつわる、バカバカしい話でした。すみません。にゃーお。





