50:空中戦
妻が都内の美容室に出かけた時のことである。
その日、僕は「お菊」と留守番をしていた。で、昼になったので、メザシを焼いた。
妻は生臭いのを嫌うので、妻がいない時を見計らって焼いたのだ。
すると、案の定、家の中がとても生臭くなった。しかたがないので、昼食のあいだ、すべての窓を全開にした。その日は12月にしては、とても暖かかったので、窓を開け放っていても寒くはなかった。
窓から吹き込む冬の風を感じながら、僕は大好物のメザシを食べていた。
すると・・・「お菊」のやつが急にハイになってしまったのだ。
どうしたんだろう?
たいして気になったわけではない。猫のやることは何もかもがバカバカしいから、最近の僕は「お菊」が何をしようと気にしないことにしているのだ。
でも、「お菊」のやつがあんまり派手に暴れ回っているものだから、一応、原因を探ろうとして「お菊」を見た。
すると、「お菊」のやつは、3匹の巨大なハエと空中戦を繰り広げていたのだ。
そう。家の中を飛び回っていたのは、3匹とも、見たこともないほど巨大なハエだった。スズメバチが飛んでいるのではないかと思ったほどだった。「お菊」はそのハエたちを追い回し、捕獲しようとしていたのである。
ゴキブリは怖がる癖に、「お菊」はハエに対しては強気である。
でも、まあ、僕は別に気にはしなかった。ただ、メザシをおかずにご飯を食べながら、「お菊」とハエたちとの空中戦を見るともなく見ていただけだった。
「お菊」は狭い家の中を走り回り、2メートル近くも飛び上がり、両手で(両前足が正しいのかな?)ハエを捕まえようとしていた。それは野生の肉食獣のような激しさだったが、飛び回るハエを捕獲するのは容易なことではなく、「お菊」のジャンプはことごとく失敗に終わっていた。
「お菊」に捕まえられるバカなハエはいないだろう。僕は無視して食事を続けた。猫を眺めていると「なごむ」という人もいるようだが、僕はそういう性格ではない。
で・・・僕が食事を終える頃には、「お菊」の空中戦は終了した。家の中を飛び回っていた3匹のハエは、どこにもいなくなってしまったのだ。
どうせみんな逃げられちゃったんだろう。
僕はそう思った。生臭さも消えたようだったので、すべての窓を閉めた。
けれど、ハエは窓から出て行ったのではなく、3匹すべてが「お菊」に捕らえられてしまったのだ。
その証拠に、「お菊」のやつは、空中戦の10分後にげロを吐いた。そのゲロの中には何と、巨大な3匹のハエの死骸があったのだ!!
うーん。さすが肉食獣!!
「お菊」のゲロを片づけながら、僕はそう思わずにはいられなかった。それとも、ハエたちがよほどマヌケだったのか・・・?
どちらにしても、真冬の昼のバカバカしい話でした。にゃーお。




