41:意地悪をする
運動不足の解消のため、それに肩凝りと腰痛の予防のために、夕方になると毎日のように僕は妻を伴って近所のスポーツクラブに通っている。もちろん、「お菊」は留守番である。
家を出る時にはまだ明るいのだが、妻は「お菊」のために部屋の明かりをつけていくようにしているらしい。
けれど・・・僕は妻の隙をうかがい、彼女がつけたばかりの部屋の明かりをみんな消しているのだ。
理由はひとつ、「お菊」に意地悪をするためである。
僕たちが帰宅する頃には、辺りはもう真っ暗である。当然、明かりの消された部屋の中も真っ暗になっている。
さて、帰宅した僕はドアの前に立つ。そして、「お菊」の名を呼ぶ。
すると・・・ドアの向こうから「にゃー」という可愛らしい声が聞こえる。
だが、すぐにはドアを開けてやらない。すると、「お菊」はさらに、「にゃー、にゃー」と可愛らしい声で泣き続ける。
「お菊」は激しい空腹を覚えている上、部屋の中が真っ暗なので心細くてしかたないのだ。
むひひひっ。いい気味だ!!
そうなのである。僕はこの可愛らしい「にやー、にゃー」が聞きたいがために、あえて意地悪をしているのだ。
僕はほかにも「お菊」に対して、さまざまな意地悪をしている。
「お菊」が気持ちよさそうに眠っていると、わざわざつついて起こす。「お菊」がテーブルの上に座っていると、後ろから押して落とす。嫌がる「お菊」を仰向けに押さえ付け、無理やりキスをする・・・・。そのほかにも、僕は思いつく限りの意地悪を「お菊」に繰り返しているのだ。
「ねえ、どうして、そんな意地悪するの?」
妻は不思議そうにしている。
うーん。どうしてなのだろう?
僕は考える。
うん。もしかしたらそれは、好きな女の子に意地悪をする男の子の気持ちに近いのかもしれない。好きだからこそ、ちょっかいを出したくなるのだ。
そんなわけで、きょうも僕は「お菊」に意地悪を続けている。だが、「お菊」のやつも負けてはいない。何げない顔で僕の脇を通り過ぎるふりをしながら、いきなり足に噛み付いたりする。もちろん、僕は「お菊」を捕まえて、すぐにその仕返しをする。
すると、「お菊」は、仕返しの仕返しをして来る。当然、僕は仕返しの仕返しの仕返しをする。すると「お菊」は、仕返しの仕返しの仕返しの仕返しをする・・・。
何ともレベルの低い戦いである。やれやれ。にゃーお。







