39:金のかからない猫
僕たち夫婦はペットショップが好きである。それで、暇さえあればペットショップに行っている。
我が家には「お菊」がいる上に、80センチを超える大きさに成長したプロトプテルスエチオピクスという肺魚もいる。妻が田んぼで捕まえて来たオタマジャクシも4匹いる(どうして、いつまでたってもカエルにならないんだろう?)。だから、これ以上はペットを飼う余裕などない。
だがそれでも、僕たちはペットショップに行く。生き物を眺め、自分が飼うことを想像しているだけで、わくわくするのである。
さて、ペットショップにはさまざまなペットグッズが売られている。猫用のハウスや洋服やおもちゃもたくさんある。
それらはどれも、カラフルで可愛らしくて、「お菊」のために買ってやりたくなる。
何といっても、「お菊」はたったひとりの娘である。父親の僕としては着飾らせてやりたいし、いろいろと買ってやりたいのである。
「これ、買って帰ろうか?」
僕はしばしばそれらを手に取り、妻にそう相談する。
けれど妻は決して首を縦には振らない。
その理由はひとつ。「お菊」が喜ばないからである。
そうなのである。「お菊」はまったく金のかからない猫なのである。
以前は僕たちもペットショップに行くたびに「お菊」にいろいろと買って帰った。ピンク色をした可愛らしいドーム型のハウスを買ったこともあるし、ネズミや小鳥の形をしたおもちゃを買ったこともある。猫用の洋服やマフラーや、ジルコニアが嵌まったお洒落なペンダントや、頭に飾る可愛らしいリボン類を買ったことも何度となくある。
だが、それらはすべて無駄になり、今ではただのゴミである。
どういうわけだか、「お菊」のやつは金を払って買ったものが好きではないのだ。
ふわふわピンクのドーム型ハウスには決して入らないくせに、宅配便で送られて来た荷物の段ボール箱にはすぐに入る。
ネズミのおもちゃや羽飾りのついた猫じゃらしでは遊ばないくせに、丸めたアルミホイルには夢中になる。
猫用の洋服やマフラーを着せるとパニックに陥るくせに、ビニールのゴミ袋には平気でくるまっている。
そんなわけで、僕はいつでも猫グッズを買うのを諦めるのである。
まあ、我が家には、とてつもなく金のかかる妻がいるから、それで充分か。にゃーお。





