36:久々にトラブル発生
最近の「お菊」はきわめて健康だった。掛かり付けの「あさひ動物病院」に行くこともなく、「やっぱりメスは強いなあ」と思っていた。「面白くないから、たまには風邪でもひけ」、と思っていたほどだった。
だが、そんな「お菊」にトラブル発生である。顎の下に「できもの」ができ、それがどんどん巨大化していったのである。
昔から僕はペットの具合が悪いと、おろおろする。心配のあまり、何も食べられなくなってしまう。
もしかしたら、何か悪い「できもの」かもしれない。もし、悪性の腫瘍だったら、どうしよう?
僕は気が弱い男である。
「お菊」を抱いて身体に触ってみると、「できもの」は顎の下だけではなく、全身のあちらこちらにできているようだ。
慌てて僕は「お菊」をクルマに乗せ、「あさひ動物病院」に連れて行った。
最近の「お菊」は、とてつもなく内弁慶なので、動物病院の待ち合い室では石のように固まって、妻の膝の上で、みっともないほどガタガタと震えていた。
で・・・診察の結果、「お菊」のできものはすべて、僕のコーミングによる外傷が原因だということが判明した。
「ちょっと乱暴にやり過ぎだよ」
医師はそう言って苦笑いした。
思い当たることがないわけではない。
コーミングは僕の数少ない仕事のひとつである。僕は毎日、膝の上に「お菊」を乗せ、金属製のクシをつかって、「お菊」の全身をコーミングする。「お菊」はいつも嫌がって、「みゃー、みゃー」と悲鳴を上げて激しく暴れる。最後には「フー!!」っと僕を威嚇する。
だが、僕は手加減はしない。「お菊」の全身のすべての毛を引っこ抜く勢いで、ぐいぐいとやる。
終わった時にはいつも、夏ミカンほどの大きさの毛玉が取れる。
僕はそれで満足だったが、どうやら、これがいけなかったらしい。クシでぐいぐいやっている時に、皮膚のあちらこちらに傷が出来てしまい、そのいくつかが化膿してしまったようなのだ。
「女の子なんだから、これからはもっと優しく扱ってあげてね」
獣医師に言われ、抗生物質をもらって帰宅した。
翌日から、コーミングの担当は、僕から妻に変わった。妻によれば、僕にはまかせておけないということだ。
コーミングの担当者が変更になると、「お菊」のできものは、あっという間に小さくなった。そして、数日後には跡形もなく消えてしまった。
やはり原因は僕だったのだ。
そんなわけで、今では「お菊」は毎日、妻に優しくコーミングされている。「そんなやり方じゃ、生ぬるい」と僕は言いたいところだが、我慢している。
うーん。「お菊」のやつ!! いい気になりやがって!!
僕にはただでさえ、できることは少ないのだが、これでまたひとつ、僕の仕事がなくなってしまった。にゃーお。




