34:夏バテ
「北極のシロクマのために、今年の夏はできるだけ冷房を使わないようにしよう」夏の初めに、僕はそう決意した。
我が家はマンションの10階なので、とても風通しがいい。それに南を向いた窓がないので、直射日光に悩まされることもない。
それじゃあ、夏の暑さを凌ぎやすいかと言えば、決してそうではない。
最上階なので、屋上からの輻射熱がものすごいのだ。裸でいると、天井から遠赤外線でも照射しているのではないかとと思うほど、熱が「じわーっ」と押し寄せて来るのだ。
暑さ対策として、僕はTシャツとジーパンを脱ぎ捨て、ボクサーショーツ1枚という格好で仕事をすることにした。
幸いなことに、我が家の前は公園になっていて、巨大な木々が我が家の窓の高さにまで茂っている。よって、裸のままベランダに出て煙草を吸っても、誰に見られる心配もない。
妻はパンツ一丁の僕を見て、「だらしない」と顔をしかめた。だが、しかたない。シロクマたちために、何としても北極海の氷を守らなくてはならない。
8月の暑さはものすごかったが、この超クールビスファッションのお陰で、僕は食欲が落ちることもなかったし、暑さで仕事ができないということもなかった(決して仕事ができたという意味ではありません。暑くても、寒くても、涼しくても、暖かくても、僕は常に仕事ができません)。
妻は元々エアコンが苦手なので、暑さなんてへっちゃらである。
そんなわけで、エアコンなしの生活はうまくいくかに思われた。
けれど、そうではなかったのである。
ある頃から、「お菊」が餌を残すようになった。いつもがっついていて、5分ほどで一粒残らず餌を食べてしまう「お菊」が、である。
まあ、そのうち食欲も戻るだろう。
そう考えて、たいして気にしていなかった。
だが、何日過ぎても「お菊」の食欲は戻らなかったのである。それどころか、食欲はさらに減退していったのである。
試しに体重計に乗せてみたら、ふだんは4キロ近くあった体重が3,5キロにまで減少していた。
数日後、「お菊」を風呂に入れた。そして、毛を身体にぴったりと張り付けさせたその姿が、あまりに小さくなっているのに驚いた。ふだんは、ふわふわなので、気がつかなかったのだ。
人間には耐えられても、「お菊」にはこの暑さがこたえたらしい。
しかたなく、その日からエアコンを使うことにした。シロクマたちには申し訳ないが、「お菊」は可愛い娘である。熱中症で弱らせてしまうわけにはいかない。
すると・・・翌日から、「お菊」の食欲は驚くほど回復した。現金なものだ。でも、ペットはやっぱり、「餌くれ、餌くれ」と、うるさいぐらのほうがいいや。
そんなわけで、きょうも我が家はエアコン全開である。涼しくていいなあ。
ごめんね、シロクマたち。来年からは、何かほかの方法を考えるからね。にゃーお。




