07:ハエを捕る
我が家はマンションの10階で、蚊も入って来なかったので網戸がなかった。15年前にはあったのだけれど、見晴しを考えて捨ててしまったのだ。基本的に僕は網戸のような、視界をさえぎるものが大嫌いである。
けれど最近、「お菊」のために網戸を取り付けた。
ここは飛び下り自殺の多いマンションだが、実は人だけではなく、猫も何匹かベランダから転落して死んでいる。実際にその死体を見たことも1度ならずある。
「お菊」にはベランダに出ないようにしつけてはいる。だが、利口だったピーナッツとは違って「お菊」はちょっとバカな猫だから、もしかしたらベランダから落ちてしまうかもしれないと思ったのだ。
さて、先日、どこから入ってきたのか、部屋の中にハエが飛んでいた。僕は別に気にならなかったし、かつてのピーナッツもハエなんかには無関心だった。
だが「お菊」はそうではなかった。「お菊」のやつは飛び回るハエを夢中になって追い回し、ついには150センチ近くも飛び上がって捕獲したのだ。その上、捕獲したハエを食べてしまったのだ。
これには僕も驚いた。
うーん。これが猫の本能である。飼いならされたピーナッツとは違い、「お菊」はいまだに野性なのである。
1度、ハエを捕獲する快感を知ってしまった「お菊」は、その後、ハエに夢中である。
ベランダの外をハエが飛ぶとバッタのような体勢で狙っている。網戸の向こう側にハエが止まると、網戸に猛然とアタックする。
これでは網戸が破れてしまう。
しかたなく、網戸を開ける。するとハエが部屋の中に入って来る。「お菊」はそれを追い回して、捕獲して、食べる。
せっかくの網戸はまったくの役立たずである。
それにしても、ハエを見つけた時の「お菊」の喜びは相当なものである。かつて「お菊」がそんなに喜んでるのは見たことがない。
「お菊」の喜びは飼い主の喜びでもある。
そんなわけで・・・僕はどこかに罠を仕掛けて大量のハエを生け捕りにして、この部屋の中に放してやろうかな、と考えている。
妻は何て言うだろう?
ところで、猫はハエを食べても平気なのかな?




