06:毎日の散歩
暖かくなってきたので、最近は「お菊」を連れて散歩に出かけるようになった。
散歩といっても、「お菊」は外では怖がって、地面に下ろすと石になってしまうので、ずっと抱いての散歩である。最近の「お菊」はデブになって、体重が3キロ以上もあるから、長く抱いていると重くてしかたない。
散歩のあいだ、「お菊」のやつはずっと迷惑そうな顔をして、妻や僕にしがみついている。「お菊」は内弁慶な猫だから、外に出るのが大嫌いなのである。
それでも、僕たちは「お菊」を無理やり連れて散歩に出る。僕たち犬派夫婦は散歩に行きたくてたまらないのだ。
ピーナッツは室内では排尿も排便も絶対にしなかったので、1日に最低3回、多い時は4回も5回も散歩に連れて行かなくてはならなかった。雨の日や早朝や、寒い晩の散歩は面倒だったが、それでも怠ったことはなかった。
ピーナッツが老犬になってからは、マンションの前の平塚八幡山公園をぐるりと1周するだけだったが、それでも犬との散歩は楽しいものだった。僕たちはいろんな人と出会って挨拶をし、公園のホームレスの人たちと世間話をし、四季の移り変わりを見ることができた。
だが、去年の7月にピーナッツが死んでからというもの、僕たちは家に引き込もるようになってしまった。1日に1度もドアの外に出ない。夫婦以外の人とは口をきかない。
そんな日が当たり前のように続いていた。
けれど、今、春が来た。
僕たちはまた、外に出ることにした。
夫婦ふたりで散歩をしてもいいのだが、散歩の時にはやはり、ペットがそばにいることが望ましい。ペットを連れていたほうが、散歩の楽しみも増すし、見知らぬ人と話す機会も格段に多くなる。
そんなわけで、僕たちは嫌がる「お菊」を無理やり散歩に連れ出すのである。
散歩はやはりいいものだ。アンズの花が満開になっている。染井吉野も咲き始めている。街路樹の芽が膨らんでいる。久しぶりに会うおじいさんと立ち話をする。顔見知りの犬たちとも会える。土の匂いがする。風が暖かくなってきたのがわかる。
「お菊」は家に帰りたがっているが、やっぱり散歩はいいなあ!!
おいっ、「お菊」。早く散歩に慣れてくれ。散歩に行きたいと、せがむようになってくれ。抱っこではなく、リードを付けて犬のように歩くようになってくれ。
犬派の僕たちは、そんなふうに願っているのである。




