03:初めての留守番
お菊さん第1回ギャラリーの人気投票にたくさんの応募ありがとうございました。第一次選考では「考え事」「寝起き」「暖を取る」の3つが同数でトップになりました。
そして、決選投票の結果、第1位に輝いた写真は「考え事」です。非常に沢山のご応募、誠にありがとうございました。
「考え事」に投票していただきました方全員に、大石圭サイン入り「履き忘れたもう片方の靴」を送らせていただきます。当選者にはメールにてご案内させていただきます。
実は同じマンションの4階には妻の母がいて、今まで長く留守をする時にはパグ犬のピーナッツはいつも義母に預けていた。ピーナッツは義母によく懐いていたので、それで何の問題もなかった。
だが、「お菊」はそうはいかない。猫の習性がそうさせるのか、妻と僕が甘やかしすぎるからか、「お菊」はひどい人見知りである。実験のため、何度か義母のところに連れて行ってみたのだが、「お菊」のやつはソファの下などに隠れてしまって絶対に出て来ないのである。義母が無理やり抱くと、猛烈に暴れて逃げ出そうとするのである。
困り果てた僕たちは、ペットシッターに相談した。この人は小山さんという茅ヶ崎市に住む女性で、動物看護士などなどペットに関するたくさんの資格を持っている専門家である。彼女に来ていただき、こういう場合はどうしたらいいのか、いろいろと相談してみた。
何しろ「お菊」はまだ生後8ヵ月の少女である。人間に換算すれば、まだ中学校に通うか通わないかという年頃の娘である。心配で、心配でたまらないのだ。
僕たちがいなくて餌は食べるだろうか? 暖房のない部屋で寒くないだろうか? 寂しくないだろうか? 毎日のブラッシングを他人にさせるだろうか? 夜はどこで眠るのだろう?(ふだんは夫婦のベッドに乗って寝ている) うんこのあと、肛門を他人に拭かせるだろうか? 寝る前にはいつも猫じゃらしで遊ぶ習慣だが、それがなくても眠るのだろうか? 帰国した時、妻や僕を忘れてしまっているのではないだろうか?
心配事は尽きないのである。
小山さんの返答は簡潔だった。
「大丈夫です」
そうか・・・大丈夫なのか・・・。
小山さんは自宅に「お菊」をひとりで留守番させて問題ないと言った。にもかかわらず、僕たち夫婦は「お菊」を義母のところに預け、その上、毎日1度、時には1日に2度、ペットシッターの小山さんに来ていただくという万全の体制を取ることにした。かかりつけの獣医にも連絡し、万一の時にはすぐに往診に駆け付けてもらう手筈も整えた。その過保護さに小山さんは呆れ顔だったが、念には念を、である。とにかく心配なのである。
そんなふうにして、妻と僕は海外に旅立った。
そして10日後・・・僕たちは再び「お菊」と再会した。
ピーナッツはいつも僕たちが長い旅から戻ると歓喜して飛びついてきた。だから今回も感動的な再会・・・と思っていたのだが、そうではなかった。
義母の家の日だまりで身体をなめていた「お菊」のやつは、10日ぶりに会う妻と僕をチラリと一瞥したあと、また何ごともなかったかのように身体をなめだしたのである。さらに「お菊」のやつ、食が細くなって痩せるどころか、コロコロと太っていたのである。小山さんの言ったとおり、何ひとつ問題はなかったのだ。
これが猫なのか・・・猫という動物には喜怒哀楽という感情が存在しないのか。
犬派の妻と僕は、まだまだ猫との暮らしには馴染めそうもないのであった。




