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ここ一ヶ月ほど、妻とふたりで毎夜のようにお酒を飲みながら、午前2時か3時までDVDで映画を見ている。
一日の一本の映画と一本のワイン。
それに何本かの煙草と、ボトル半分のウィスキー。さらに少々のビールと日本酒と焼酎(飲み過ぎですね)。
それはとても楽しい時間である。
しかし、ひとつだけ困ったことがある。
僕は映画をほとんど覚えていられないのである。
映画を見終わると、僕たちはベッドに入る。そして、見たばかりの映画について、あれこれと話をする。この時には僕の脳にはまだ映画の記憶が残っている。
だが・・・翌朝には、僕は前夜の映画のことを、綺麗さっぱり、ほぼ完全に忘れてしまっている。
だから翌日の朝食の時(朝食といっても午後2時過ぎですが)、妻が前夜の映画の話をしても、ふたりの話が噛み合わない。まだ見終わってから12時間ほどしかたっていないというのにである。
「認知症の老人といるみたい!!」
妻は呆れかえって、いつもそう言う。時には「話ができなくて、ぜんぜん面白くない!!」と怒ることもある。
だが、責められても、僕にはどうすることもできない。本当に覚えていないのだ。
時々は映画を見ている途中で眠くなり(僕はあまり眠くならないが、妻はしばしば眠くなる)、残りは翌日の晩に見ることもある。
いちばん困るのは、そんな時だ。
翌日になると、僕は前夜のストーリーがまったく思い出せないのだ。
だから、妻に頼んで、翌日もまた最初から見ることになる。妻はすでに前半部分は見ているから、とても不愉快そう、かつ退屈そうにしている。退屈のあまり、途中でまた眠ってしまうこともある。
もっと悪いのは、長い映画を見ている時だ。
後半部分を見ている時には、僕はもうすでに前半部分のストーリーを忘れてしまっているのだ。
妻に「どういう話だったっけ?」と質問したいが、画面に見入っている妻に話しかけるのは悪いし、またバカにされるのも腹立たしいから黙っている。
そんな時の僕はただ、呆然と画面を眺めているだけ。スクリーン上で何が起きているのか、僕にはまったく理解できない。
特に登場人物が多い映画だと、誰が誰なのか、まったくわからない。しかたないから、ストーリーは無視し、「あの女優はかわいいな」「あの子はスタイルがいいな」と思っている。
いったい、どうしてこうなのだう? 脳の記憶中枢に腫瘍か何かができているのだろうか? あるいは、幼い頃の交通事故の後遺症なのだろうか?
いちばん考えられるのは、僕の頭の中は、すでに飽和状態にあるということだ。
僕はとてつもなく凡庸で才能に乏しい人間なのに、小説を書くという難しい仕事をしている。もしかしたら、僕の脳にとっては、これがとても不自然なことなのかもしれない。
脳のほとんどの部分を「小説を書く」ということだけに使っているから、ほかのことが何も頭に入らないのである。容量がいっぱいになってしまったパソコンと同じで、うまく動かないのである。
だが、僕は小説家だ。書かないわけにはいかない。
あーあ。困ったな。
さて、今夜は前夜、途中まで見た「ホテル・ルワンダ」の続きを見る予定なのだが・・・どんな話だったのかが、まったく思い出せない。
しかたがない。妻に頼んで、また最初から見ることにします。妻はまた、きっと呆れかえるんだろうなあ。やれやれ。

