43
取り立てて、ここに書くようなことがない日々が続いている。
平穏と言えば平穏だが、退屈と言えば退屈でもある。
だが、幸いなことに僕は退屈が嫌いではない。と言うか、許されることなら僕は、1日中何もせず、ぼんやりとしていたい人間である。
僕はぼんやりとしているのが好きだ。それで、妻が呆れるほど、毎日ぼんやりとして暮らしている。
新聞は読むけれど、テレビはほとんど見ない。仕事で必要なもの以外は映画も見ない。
妻がかける音楽は耳に入って来るけれど、自分から積極的に音楽を聴こうとすることもない。
ぼんやり・・・ただ、ぼんやりと暮らしている。
できることなら、このまま時間が過ぎてしまえばいい。
小さい頃から、僕はいつもそう思っていた。
何もしないまま、ただ時間が過ぎて、人生が終わってしまえばいい。
そんな僕にとって、平穏で退屈な日々はバカンスみたいなものである。
だが、僕は小説家なので、永遠にぼんやりしているわけにはいかない。
僕には意外と真面目な一面もあって、ほとんど毎日、ワープロに向かう。そして、自分で決めたノルマが達成できるまでキーボードを打つ。
僕が自分に課しているノルマは1日に2,000字という、驚くほど少ないものである。普通の作家の半分か、3分の1だ。もし何か用事があってノルマが達成できなくても、翌日に繰り越したりはしない。翌日も2,000字を書いたらノルマ達成である。
だが、そのわずかなノルマでさえ、僕には苦痛である。
とにかく2,000字を書いてしまおう。そして、一刻も早くきょうの仕事を終わらせて、またぼんやりしよう。
そんなことばかり思って僕は書いている。「コンビニ」や「ファミレス」と書けばいいところを、文字数を増やすために「コンビニエンスストア」「ファミリーレストラン」と書くこともある。
筆が進まないと、得意な風景描写に逃げる。どうでもいいエピソードで枚数を稼ぐ。
最後の推敲の時には、余計な部分はごっそりと削るから、何の意味もないのだが、とにかくノルマを果たしたい一心なのである。
そんなふうにして、僕は一日のノルマを終える。そしてまた、ぼんやりと退屈を楽しむ。
平穏で、退屈な暮らしの中で、目下の心配事は酒量の増加である。1日に5時間も6時間も飲んでいるから、必然的にとてつもなくたくさんのお酒を飲むことになる。
このお酒の量は何とかしないと・・・そう思いつつも、たぶん今夜も僕は、浴びるほどに飲むのである。
結論。
平凡と退屈は、楽しいけれど酔っ払う。

