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15年ほど前から、「ベスパ」というイタリア製のスクーターに乗っている。
「ローマの休日」でオードリ−・へップバーン扮するアン王女が乗っていたあのスクーターである。
15年乗り続けていると言っても、決して大切にしているわけではない。
いつも雨ざらしだから錆だらけだし、何度も転倒しているから傷だらけだ。
おまけにこのスクーターは、日本製のスクーターと比べると、ものすごく乗りにくいのだ。
まず重い。日本製と違って、このスクーターのボディはすべて鉄でできているので、とにかくとてつもなく重い。非力な女性ではスタンドを出すことも容易ではないほどだ。
さらに、重いのにエンジンのパワーがないから、スピードがまったく出ない。特に発進時はのろのろで、老人の自転車に抜かれてしまうほどである。
さらにさらに・・・パワーがないのに、音だけはやかましい。オートマチックではないので、ギアの操作に非常な熟練を要する。ガソリンを入れる時は、ガソリンの分量に応じてその場でエンジンオイルを測って注入しなくてはならないから、とても面倒である。さらにその上、すぐに故障する。おまけに故障をしても、修理をしてくれる店がほとんどないし、部品も非常に高価である。
と、欠点を数えればキリがない。
つまり、とても手がかかる不便な乗り物なのである。
にもかかわらず、僕はこのスクーターに乗り続けている。
その理由はただひとつ。
友人や家族が口をそろえて、「そんなスクーター、捨てちゃえば?」「買い替えたほうがいいんじゃない?」と言うからである。
何度も書いているように、僕は人から言われたことと逆のことをする性格である。
さて、そんな乗りにくいスクーターだが、仕事に飽きると僕はそれに乗る。そして、近所にツーリングに出かける。
平塚は田舎なので、5キロも走ると、あたりはすべて田園地帯である。そんな中、草や木々の匂いを嗅ぎながら、5月の風を切って僕は走る。
遠くには丹沢山塊も見えるし、富士山も見える。空ではヒバリが鳴いている。田植えが済んだばかりの田んぼで、白いサギが餌をついばんでいる。
僕は走り続ける。
袖口から入って来た暖かな風が、シャツの背中を膨らませる。シートから伝わって来る心地よい振動が、凝り固まった全身の筋肉をほぐしていく。
何も考えない。エンジンの音を聞きながら、ただ走る。それはとても爽快で楽しい時間である。
さて、肩が凝った。きょうは天気がよくて暖かいから、これからまたベスパに乗ろう。
海に行こうかな? 相模川に行こうかな? それとも思いきって、箱根まで足を伸ばしてみようかな?
それでは、行って来ます!!

