24
生まれて初めてテレビに出た。
取材に来たのはテレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」と、フジテレビ系の「目覚ましテレビ」で、どちらも、ネスレから発売になった「クリスピー物語」というお菓子のおまけの文庫本の件である。
実を言うと、「呪怨」の頃から、僕は写真撮影をお断りしていた。
理由は簡単。
僕が変態作家の大石圭だと知られたくないからである。
だから自分のホームページにも、顔がわかってしまうような写真は使わなかったつもりである。
だが、取材に来る方々はたいていカメラを持って来るし、そのたびに写真をお断りするのも気が引けて、いつのまにか「写真撮影いつでもオーケー」にしてしまった。
僕は一貫性のない、いい加減な性格である。
おかげで今では、近所の人たちのほとんどが、僕が変態作家の大石圭だと知っている。
同じマンションに暮らす人たちだけではなく、近くコンビニの人たちも、新聞屋さんも、宅配便の人たちも、生協の配達のお兄さんも、散歩で出会う人たちも、行きつけの熱帯魚店の人たちも、スポーツクラブのスタッフたちも、みんな僕のことを知っているのだ。
でも、まあ、それには慣れた。
そんなわけで、今回もテレビの取材を受けることにしたのだが、前にも書いたように我がは1LDKで、とてつもなく狭い。
その狭い我が家に6人も7人も取材の人がやって来て、大きな機材が運び込まれて、まるで満員電車のようになってしまって大変だった。
いや、僕は大変ではなかったが、取材の人たちには窮屈な思いをさせて申し訳なかった。
撮影に費やした時間はどちらも1時間ほど。眩しすぎるほどのライトが僕を照らしているし、カメラはこっちを向いているし、大勢の人が見つめているしで緊張して、支離滅裂なインタヴューになってしまった。
僕はテレビに出ることを誰にも言わなかった。エージェントの了解を得ただけである。
もちろん、このホームページにも書かなかった。だが、妻が両方の母親に教えたせいで、親戚中が大騒ぎになってしまった。
さて、放映の日。
ふだんはテレビはまったく見ないのだが、自分が映るというので見ることにした。
「かっこよく映ってるといいな」
そんな不可能なことを願っていると・・・画面に僕の顔が映った。
あっ。なんだ、あれは?
僕は驚き、同時にがっかりした。
確かに自分がハンサムだと思ったことはないし、知的に見えると思ったこともない。
しかし、テレビの画面でしどろもどろになって喋っていたのは、僕の知らない「黒っぽい変な人」であった。しかも、撮影に1時間もかけたというのに「ワールドビジネスサテライト」に僕が映ったのは、たったの25秒。「目覚ましテレビ」のほうも1分ほどであった。
それにしても、あの黒っぽい変なのは何だ?
人は見た目が9割である。この時ほど親を恨んだことはない。
その後、たまたまテレビを見ていたという読者の方々から、「大石さん、素敵でしたよ」というお世辞のメールをいくつかいただいた。
だが、僕にははっきりとわかった。
結論。僕はテレビに出られる容姿をしていないのである。ちぇっ。

